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ようきペットクリニックのスタッフブログです

🐶犬の腎周囲嚢胞に対し、腹腔鏡下で治療を実施しました

犬の腎臓の周りに液体がたまり、腫れのように見える病気を「腎周囲嚢胞(じんしゅういのうほう)」といいます。原因はさまざまで、慢性的な炎症・外傷・尿路のトラブルなどが背景にあると考えられています。

腎周囲嚢胞が大きくなると、腎臓を圧迫して機能を低下させたり、食欲不振・元気消失・腹部膨満などの症状につながることがあります。

■ 従来の治療法と課題
これまで腎周囲嚢胞の治療は、多くの場合「大きく開腹して嚢胞を開窓(造窓)する」手術が必要でした。しかし、
・切開が大きい
・術後の痛みが強い
・入院日数が長くなりやすい
といった課題があり、体への負担が小さくない手術でした。

■ 当院で実施した新しいアプローチ
今回当院では、腹腔鏡を使用し、腎周囲嚢胞の「開窓(造窓)+大網被覆術」を実施しました。

○ お腹の皮膚切開は小さく、3か所のみ
○ 腹腔鏡で拡大視しながら安全に処置
○ 嚢胞壁を開窓して排液を促す
○ 大網を嚢胞部に被覆し、再発を抑える構造を作る

大網は炎症を抑えたり治癒を促す働きがある組織で、「身体がもともと持っている治癒サポートシステム」のような役割を果たします。腎周囲嚢胞との相性が非常に良いといわれています。

■ 腹腔鏡手術のメリット
従来の開腹手術と比較すると、次のような利点が期待できます。

・切開が小さく、傷跡が目立ちにくい
・術後の痛みが少ない
・回復が早く、早期の食欲・元気回復が期待できる
・入院期間の短縮につながる

「より痛みを少なく、安全に、確実に治療する」ことを目的とした、動物にやさしい手術方法です。

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■ 手術の動画です(苦手でなければご覧ください)

■ 腹腔鏡手術は“万能”ではありません
大切なことですが、すべての症例で腹腔鏡が最良というわけではありません。
・腹腔鏡が最も負担が少なく効果が高い場合
・開腹手術のほうが安全で確実な場合
・手術以外の治療が適する場合
それぞれの子の状態によって最適解は変わります。

当院では「腹腔鏡ができるから行う」のではなく、「一頭一頭にとって最も良い治療は何か」を第一に治療方針をご提案しています。

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■ 腎周囲嚢胞でお困りの方へ
・お腹が張ってきた
・腎臓の数値が少しずつ悪化している
・超音波検査で液体貯留を指摘された
・手術をすすめられたが不安がある
こういった場合はご相談ください。

腹腔鏡手術の経験が豊富な獣医師が、画像検査から治療方針の説明まで丁寧に対応いたします。大切なご家族が少しでも快適に過ごせるよう、負担の少ない医療を今後も追求してまいります。

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🐾 その子の身体にやさしく、確かな医療を。
今後も最先端の低侵襲手術を積極的に取り入れ、皆さまの大切なご家族の健康を守ってまいります。

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