腹腔鏡下胃固定術とは? 低侵襲で可能な胃捻転予防手術
犬の胃捻転・胃拡張症候群(GDV)は、急性に発症し、適切な処置を行った場合にも40%の確率で死亡してしまう危険な疾患です。
胃捻転を発症した症例のレントゲン写真
特に大型犬や深胸の犬種(グレート・デーン、ジャーマン・シェパード、スタンダード・プードル、レトリーバー系など)で発生率が高く、予防的な処置が推奨されています。
その中で、近年注目されているのが腹腔鏡を用いた胃固定術(腹腔鏡下胃固定術)です。
1. 胃固定術の目的
胃捻転は、胃がガスで膨張し、捻じれることで血流が遮断される状態です。この状態が長く続くと、胃壁が壊死し、ショックを引き起こし、死に至ることも多々あります。
胃固定術は、胃を腹壁に縫合して捻じれを防ぐ手術であり、開腹手術と腹腔鏡手術の2種類があります。
2. 従来の開腹手術と腹腔鏡手術の違い
腹腔鏡手術は、低侵襲で術後の回復が早い点がメリットです。そのため、健康なうちに予防的に手術を受けることが望まれます。
3. 腹腔鏡下胃固定術の手術方法
麻酔をかけ、腹腔内に炭酸ガスを注入して手術視野を確保。
小さな切開(1cm程度)を3カ所作り、腹腔鏡と鉗子を挿入。
胃を適切な位置に固定し、腹壁に縫合して動かないようにする。
炭酸ガスを抜き、切開部を縫合して手術完了。
手術時間は通常30〜60分程度で、手術当日に退院できることが多いです。
4. 胃固定術が推奨される犬
以下のような犬は、予防的な胃固定術を検討する価値があります。
特に去勢や避妊などの不妊手術の際に実施することを当院ではオススメしております。
✅ 胃捻転のリスクが高い犬種(グレート・デーン、ボルゾイ、ジャーマン・シェパード、スタンダードプードル、レトリーバー系の犬種)✅ 過去に胃拡張を経験したことがある犬✅ 食事後にお腹が膨らみやすい犬✅ 活動的で、食後すぐに運動する習性がある犬
5. まとめ:胃捻転を予防するために
胃捻転は命に関わる重大な疾患ですが、腹腔鏡下胃固定術によって予防できる可能性が高いです。従来の開腹手術に比べ、低侵襲で回復が早いため、犬の負担を最小限に抑えつつ予防的処置が可能になります。
胃捻転のリスクが高い犬を飼っている場合、事前に獣医師と相談し、適切な予防策を考えることが大切です。腹腔鏡下胃固定術が選択肢の一つとして有効であることを知っておきましょう。
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