獣医内視鏡外科学会にて発表を行いました
先日、獣医内視鏡外科学会にて「ウーンドリトラクターを使用した硬性鏡補助下胃切開」という手術について学会発表を行いました。




獣医療を行ううえで、私が大切にしているのは、根拠のある治療を行うこと、そして同業者に見られても恥ずかしくない医療を実践することです。
動物は、自分で症状や苦しさを言葉にすることができません。だからこそ獣医師は、常に自分の良心に照らし、誠実で正しい医療を行わなければならないと考えています。
学会発表や論文発表は、日々の診療を厳しい目で見つめ直す機会でもあります。
そうした場に立つということは、曖昧さや思い込みに頼らず、根拠に基づき、症例に真摯に向き合ってきたかが問われる場でもあります。
もしその姿勢が伴っていなければ、学術の場では厳しい指摘を受けることになります。
そりゃあもう言葉でボコボコにされるわけです。
だからこそ私は、学会発表を積み重ねている先生方に敬意を持っています。
学会発表を重ねるということは、恥ずかしくない医療を実施していることの裏返しだと思うからです。
一方で、十分な根拠に基づかず、経験則だけで判断したり、不確かな治療を勧めるような姿勢には慎重であるべきだと考えています。
自分自身もそうならないよう、常に学び続け、検証し続けることを大切にしています。
話がそれてしまいましたが、今回は、学会で発表した内容を飼い主さまにも分かりやすくご紹介します。
犬や猫では、以下のようなものを飲み込んでしまうことがあります。
おもちゃ
布・タオル
石やプラスチック
針や金属類(とても危険)
👉 嘔吐
👉 食欲低下
👉 腸閉塞
などを引き起こし、手術が必要になるケースも少なくありません。
従来の手術(開腹胃切開)の課題
これまでは、催吐処置、消化管内視鏡で異物の摘出が不可能な場合
お腹を大きく開けて胃を外に出して胃を切開するという「開腹手術」が一般的でした。
もちろん安全性の高い方法ですが、
傷が大きい
術後の痛みが出やすい
回復に時間がかかる
といった課題がありました。
🔍 硬性鏡補助下胃切開とは?
そこで当院で導入しているのが、
我々が開発した術式「ウーンドリトラクターを使用した硬性鏡補助下胃切開」です。
特徴は以下の通りです。
✔ 小さな切開で手術が可能
通常よりもはるかに小さい傷で行えます。(1.5cm程度)
✔ カメラで胃の中を直接確認
硬性鏡を使うことで、胃の中を拡大して観察
異物の位置を正確に把握することができます。
✔ 異物を確実に取り除ける
直視下で操作するため、
取り残しのリスクが低い
細かい異物にも対応可能
というメリットがあります。
この方法には、従来の手術と比べて
🟢 傷が小さい
🟢 痛みが少ない
🟢 回復が早い
🟢 入院期間の短縮が期待できる
といった利点があります。

実際に、
「思ったより元気になるのが早い」
「次の日にはかなり普通に近い」
といったケースも多く見られます。
⚠️ すべての症例に適応できるわけではありません
ただし、この手術は万能ではありません。
異物が非常に大きい
胃以外(腸など)に移動している
状態が重度(穿孔・壊死など)
といった場合には、従来の開腹手術が必要になることもあります。
🏥 学会発表を通じて
今回の発表では、
・小切開での安全な手術方法
・胃内を直接観察する技術
・低侵襲での異物摘出の可能性
について報告しました。これらは単なるテクニックではなく、
「動物にとって本当に優しい治療とは何か」を追求した結果の一つだと考えています。
学会発表後には、多くの先生方からご質問をいただき、
「素晴らしい術式なので、自分の病院でも取り入れたい」
というお言葉もいただきました。
この術式は、特別な設備や限られた施設だけのものではなく、
工夫次第で、より多くの現場に広げていける可能性がある技術だと思っています。
だからこそ、
👉 低侵襲外科を
👉 もっとシンプルに
👉 もっと多くの動物へ届ける
それが、自分の役割のひとつだと感じています。
こうした声をいただけたことは、その方向性が間違っていないと背中を押されたようで、本当に嬉しく感じました。
まだまだ、獣医療において低侵襲外科は「特別なもの」と捉えられがちです。
しかし本来は、
特別な技術ではなく、当たり前に選べる選択肢であるべきものだと考えています。
そのためにも、これからも発信を続け、少しでも多くの現場にこの手術を届けていきたいと思います。
次は、5月にアメリカで世界獣医内視鏡外科学会(VES)、6月に大宮で日本獣医麻酔外科学会の発表を控えています。
目の前の一例一例に真剣に向き合いながら、技術と心を磨き続けること。
それが結果として、より良い医療につながると信じています。
これからも、一歩ずつ積み重ねていきます。

最新の記事
-
内視鏡手術
獣医内視鏡外科学会にて発表を行いました