副腎腫瘍の外科手術について
今回はやや長文です。頑張って最後まで見てください💦
【副腎腫瘍の手術について】
副腎というのは、腎臓のすぐそばにある小さな臓器ですが、ホルモンの調整など大切な役割を担っています。この副腎に腫瘍ができることがあり、外科手術が必要になることがあります。
【主な副腎腫瘍の種類】
副腎皮質腺腫
良性の腫瘍で、過剰なホルモン(コルチゾールなど)を分泌することがあります。
クッシング症候群の原因になることが多いです。
副腎皮質癌
悪性腫瘍で、周囲の臓器や血管へ広がることがあります。ホルモンを過剰に出すタイプとそうでないものがあります。
褐色細胞腫
副腎髄質から発生する腫瘍で、アドレナリンやノルアドレナリンなどのカテコラミンというホルモンを大量に分泌し、血圧上昇や不整脈、急激な状態悪化を引き起こすことがあります。
特に、後大静脈という大きな血管に浸潤するリスクがあるため、慎重な対応が必要です。
今回、ようきペットクリニックでは、2例の副腎腫瘍の手術を行いました。
1例は、「褐色細胞腫」で、腫瘍4㎝程度に腫大(かなり大きいです)しており、後大静脈(お腹の中を通るとても大きな血管)に入り込んでしまっている状態(腫瘍の後大静脈浸潤)でした。
腹部超音波検査にて副腎腫瘍の存在と後大静脈への浸潤が見られる
CT検査にて 副腎腫瘍の後大静脈への浸潤が見られる
このような場合は、腫瘍を取り除くために一時的に後大静脈を遮断する必要があります、遮断が可能な時間には制限があり、その制限時間内で切開した後大静脈の縫合を正確に行うには高い技術が必要となり、手術の難易度は非常に高くなります。
また、術中の出血や血圧変動などによって、麻酔のリスクも非常に高くなるため、熟練した麻酔科医やスタッフとの連携が欠かせません。
一般的に、このようなケースの手術では、国内外の報告で周術期の死亡率は20~30%程度ともいわれており、慎重かつ高度な対応が求められます。
当院でも麻酔科医の先生と一緒に麻酔チームを立ち上げ綿密に準備を行い、無事に腫瘍を摘出することができました。
摘出した副腎腫瘍
術後の様子も非常に良好で翌日に退院することが出来ました。
【腹腔鏡による低侵襲手術も可能です】
もう1例は、副腎皮質腺腫という良性の腫瘍で、こちらは1㎝程の腫瘍で静脈浸潤などはなく腹腔鏡手術にて摘出を行いました。
この手術では、わずか5mmの小さな傷口を3カ所あけるだけで、体への負担も少なく、術後の回復も非常に早いのが特徴です。
腹腔鏡手術は、腫瘍が大きくなりすぎていない場合や、血管に浸潤していない場合に選択可能な術式です。
だからこそ、腫瘍が小さいうちに見つけることがとても大切です。
■ 早期発見のためにできること
副腎腫瘍は、初期には症状が出にくいことが多いため、定期的な画像検査(超音波エコーやCTなど)がとても重要になります。
体調不良の際の検査以外に、健康診断でのエコー検査にて偶然腫瘍が見つかることもあります。
高齢になるほど副腎腫瘍の発生率は高くなるので、6歳を超えたあたりから、毎年の健康診断の際に画像診断を追加すると良いと思います。
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